プロとアマとを分けるもの――「奨励会」という世界、己の人生を”懸ける”ということ

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 奨励会というのは将棋のプロを目指す者達の登竜門だ。

6級から始まり昇級昇段を重ね、三段リーグを抜けると、晴れて棋士四段となり賞金・給料を手にすることができる。

私は中学三年生の夏から四年ほど在籍していた。

 奨励会――というとこんなおぼろげな記憶が蘇る。

========◆橋本長道1984年生まれの小説家、ライター、将棋講師、元奨励会員。

神戸大学経済学部卒。

著書に『サラの柔らかな香車』『サラは銀の涙を探しに』(いずれも集英社刊)。

========●「○○くん、それ……」 関西将棋会館3階奥の棋士室は奨励会員や棋士達の研究の場となっている。

よく行われているのが「VS」と呼ばれる1対1でひたすら対局する――という形式の研究会だった。

 ある日、将来超有望な小学生奨励会員が中学生の奨励会員と棋士室でVSをしていた。

そこに、奨励会幹事で鬼のように厳しいことで有名なプロの先生が入ってきたのである。

 先生は奨励会でふがいない成績をとり続けている年齢の高い者に対して「早くやめたほうがいい」などと厳しい言葉を投げることで知られていた。

私もキツく言われることがよくあり、非常に苦手な先生だった。

もちろん、それは優しさの裏返しでもあり、年齢制限ギリギリながら努力を続ける奨励会員などからは逆に慕われていた。

 先生は眉間に皺を寄せながら、VSをしている二人に近づき、こう声をかけた。

 「○○くん、それお金賭けてるの?」 ○○というのは小学生奨励会員の名前である。

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